この文章は、大学生の学習およびレポート作成におけるAI利用について、濱本個人の見解を示したものである。結論から言うと、特別に指示がある場合を除き、濱本はレポート作成に生成AIを利用することを禁止しない。正しく、効果的に利用している場合には、生成AIで作成した文章をコピペして用いたとしても、それを理由に減点するなどの処置はしない。ただし,だからと言って無制限に生成AIにレポート作成を任せて簡単に単位(卒業資格)が取れるというものではなく,適切かつ有効な使い方とそうでない使い方がある。生成AIが急速に普及した今日,私たちはそれらとのうまいつきあい方を探求しなければならない。
新しい技術を用いて目の前の課題を効率的にこなすことは当たり前である。例えば,現在の統計学の授業において,分散や標準偏差を手計算で求める経験はあまりない。電卓やExcelが普及した当初は,これらの利用を「ズル」とする風潮もあったかもしれないが,現在は小サンプルの計算練習であっても当たり前のように電卓を使い,サンプルサイズが大きくなってくるとExcelなどの表計算ソフトを用いて計算することが一般的である(基礎的な演算にのみ利用するかVAR.S, VAR.P関数などを使うかはケースバイケースである)。私たちは,新しいことを学ぶ際に,本質的な部分と些末な部分を峻別し,前者に時間を割くため,後者の思考・試行時間をなるべく外注する方向で学業も効率化してきた。ここでいう本質的な部分とは分散や標準偏差がデータのどのような性質を示しているのか,計算の手順が何を意味しているのかを理解することであり,些末な部分とは,すべてのケースに対していちいち平均との差,その2乗,それらの総和,さらにはその平方根までを計算ミスなく求めるという部分である。
かつては間違いのない計算ができるようになることが優秀さを示す指標だったのかもしれないが,現在ではその能力は機械に代替された仕事として重要視されない。AIが普及した現代に求められるのもこれと同じく,本質的な問題に注力できるように、AIでできることをやらせることは、次代の学術探究活動では当然のこととされる。これからの学習は、自身の学習状況に合わせて、取り組むべき本質的な課題と外注すべき些末な課題を適切に見極め、AIにできることを適切にやらせながら、自らの重要な課題に集中していくことが求められる。
計算機の普及とAIの普及で大きく異なるところは,AIは命令者の意図を越えた作業をしてくるところである。電卓やExcelは,入力した式に対して決まった計算結果しか返さない。どれほど高度な関数を使っても,その出力は「命令を忠実に実行した結果」にとどまる。ところが生成AIは,こちらが書いた指示文や途中までの文章を手がかりにして,「それらしい」続きや理由付け,さらには前提の補完までを自動で行う。便利である一方で,この性質は執筆者の責任を重くする。AIの提案がもっともらしく見えるほど,誤りや飛躍にも気づきにくくなるからである。
以上を踏まえて濱本が推奨するのは,生成AIを「代筆者」ではなく「作業補助者」として使うことである。具体的には次のような使い方が有効である。
前3つは研究の前半、つまり研究そのものの計画や資料作成にかかわるパートで、後ろ2つはある程度のリサーチが終了した後の結果出力に関わるパートである。いずれの場合もAIの出力をそのまま採用するのではなく,執筆者が根拠を確認し,取捨選択し,自分の言葉として再構成することが重要である。これ以降は4~5つまりレポートの作成時における利用を前提に議論を進める。
レポートの方向性の相談相手としては生成AIは最適である。例えば、現代若年者のインターネット利用について関心があったとしよう。この関心に沿って『政府統計の総合窓口』を探索していくと下のようなデータが得られたとしよう。
このデータをメインとするレポートを書きたいとする。ただ、このデータを張り付けるだけではレポートにはならず、適切な論点提示、データの解釈、情報の補強などが必要である。では、これらをどのように行えばよいのか。これをAIに聞いてみる。

総務省『通信利用動向調査』より
このまま用いるには多少無理があるが、研究の第1歩目を自身の足で踏みだせば、第2歩目以降の方向性を示してくれる。回答は思考ごとに変わるが、今回の回答は具体的な構成とそれに対する必要データの案まで出力されているため、これに従って新たにデータを入手していけば、レポートに必要なパーツが揃えられる。
この例でのAIへの質問文(プロンプト)は非常に抽象的なものだが、一つデータを具体的に与えれば、回答の具体・抽象度もそれに応じて変化する。もし問題を「若年者のインターネット利用」から「その変化」や「社会的背景」などより具体的に焦点化していけば、それに沿ってリサーチ案も具体化してくれるし、レポートの分量や求められている内容をより具体的に指示することもできる。
逆に誤った(推奨されない)使い方もある。Excelの関数を理解せずにコピペして計算すると,誤った結果に気づかないままレポートを提出してしまうのと同じで,生成AIも使い方を誤ると逆効果になる。誤った使い方とは、「出力を無検討のまま丸写しすること」ほぼ一点に尽きるといってよい。AIの生成文章を丸写しすることそのものは妨げない、しかし、入念なチェックを介さずにコピペすることは以下のようなリスクがある。
根拠のない事実の記述
2026年1月現在、AIはかなり事実性に注意できるようになったものの、一見正しいように見える根拠不明の命題や、存在しない文献の引用などを行う可能性(ハルシネーション)はまだ残っている。生成された文章の引用や統計値,法令・制度の説明を確かめずに使うと、事実と異なる内容を捏造するレポートになる危険性がある。
自分の主張が消える
生成AIの文章生成のアルゴリズムは必然的に、クセのない、平均化された文章になりやすい。それはすなわちオリジナリティのない文章であり、これに頼りすぎるとレポート全体が「誰が書いても同じ」文章になる。このようなレポートは,たとえ表面的に整っていても評価できない。AIが書ける文章を提出すること自体が問題なのではなく,「あなたが書くことの価値」が読み取れないことが問題である。